《インタビュー》自分にかけた呪いを解くために――抱え続けた葛藤と「社会に還元したい」理由
【今回インタビューさせてもらった方】
特定非営利活動法人TEARDROPS理事「ゆき」さん。
高校時代からの強迫性障害や家庭環境による生きづらさ、葛藤を抱えて過ごす中で自身と向き合う日々を送る。
その後、SNSやブログで自分と同じ境遇を持つ人の発信に救われた経験から、「精神疾患や生きづらさを抱える人が体験談を共有し、気軽に悩みを相談できる居場所を作る」ことを目指して活動をスタート。
現在は、同じ痛みを抱える人々に寄り添う活動を続けながら、自分自身の次なる一歩に向けて歩みを進めている。
前回は、「生きづらさを抱えていた過去と、自身との向き合い方」についてお話を聞きました。まだお読みでない方はぜひあわせてご覧ください!
今日はお話しできるのを楽しみにしていました!
最近、心がふっと軽くなったり、ホッとしたりする時間(好きな本・音楽・過ごし方など)はありますか?
え〜?(笑)ほっとする瞬間…いや、ないです。ないですね。たぶん、ずっとどこかで緊張してる感覚が、生まれた時からずっとあります。
何に気を張ってるとか、疲れてると、自分で思っているの?
いや、それが分かんないんですよね。何に気を使ってるのか分からないですけど……例えば、私、今ちょっと父親とうまくいってなくて。その父親と、今東京で二人暮らししてるんですけど、東京の家にいたら父親のことを考えてないといけないから、緊張感を張ってる。
父親の機嫌を窺わないといけないから緊張してるし、こっち(神戸)にいたとしても、母の機嫌を伺ってしまう。人に対してずっと気を使ってるのかなって。1人でいる時はリラックスしてるかと言われたら、なんかちょっと、何かに満たされていない感覚っていうのがあって。この暇な時間を有意義に過ごさなきゃ、みたいなそういう強迫観念みたいなのがあって。本を読むにしても「この時間は何に有意義なのかな」っていう自分の中の問いかけが始まるんですよね。だから、あんまりリラックスできてないかも。
そもそも今までの人生の中で満たされたという感覚はあった?
……ないですね。いや1個あるかな。私、中学校の時にめちゃくちゃ成績が良くて。学年1位だったんですよ。学年1位を1年間取り続けたことがあって。
でも、それでも私、自分のこと「すごい」って思いたくなくて。すごい自分のこと否定してたんですよ。「私、自分がこんなすごいはずがない」って否定してたんだけど、最近振り返ったら「あん時はすごい勉強してたし、頑張ってたな」って。過去の自分を認めてあげられた時は、結構嬉しかったっていうか、満たされた感じはありました。
好きな本や食べ物について
好きな本や、作家さんは?
島本理生さん。
いちばん好きな作品は?3つくらい挙げるとしたら?
めっちゃ王道に「ファーストラブ」。あとは「夏の祭壇」「ナラタージュ」かな。
島本理生さんのどういうところが好きですか?
なんだろうな、すごい読み応えがあるんですけど、読み応えの中身っていうのが……その『ファーストラブ』だったら、一応恋愛とサスペンスが合わさった話なんですけど、それだけじゃなくて、その中に社会問題が含まれていて。
ちゃんと社会問題を小説に落とし込む上で、エンタメとして消費させないっていうか。エンタメとして消費してないなっていうのが伝わってくる感じが好きで、すごくいいなと思っています。
好きな食べ物や、逆にこれだけは無理っていうものはありますか?
食べ物は、ズッキーニです(笑)。苦手なものは、ナスです(笑)。
どっちも似てるな(笑)。それは小さい頃から? ズッキーニってでも、あんま食べなくない?
小さい頃からです。いや、美味しいんですよ。なんか確かに食べないですけど、夏場とかに食べたら美味しくて。炒め物に入ってて、それで好きになりました。
周囲からのイメージと、自分自身の捉え方
周りからは「どんな性格」と言われることが多いですか?また、自分自身では自分のことをどう捉えていますか?
真面目で完璧主義って言われます。
自分自身ではどうですか? それに対して。それは自分では「良い」って捉えてますか? 良くないですか?
まぁ真面目なんだろうなっていうのはあって。真面目っていうのが、例えば学校の校則とか破らない真面目さだとしたら、それは先生に怒られるのが怖いからっていうのがあって。常に他人の目を気にしてるし、他人からどう思われるか気にしちゃうから、やっぱりちょっと神経質すぎる。他人の目をすごく気にしちゃう性格だなとは思います。
どっちもどっちですね。自分自身はすごくしんどいけど、周りから見たら「すごく真面目で良い子ね」って言われるから、良いことも悪いこともあるかなって。割切ってます。
個人の歩み――孤独を感じていた時期と、診断名がついたこと
これまでの人生で、孤独を感じたり、「生きづらさ」や痛みを抱え込んでいた時期はありましたか?
あります(笑)。私の人生、大きく2つあって。1個が不登校の時。起立性調節障害になって不登校の時に、すごい毎日泣いてて「どうなるのかな」っていう不安の中にいた時。
もう1個が、これは言語化できないんですけど……強迫性障害になった時で、それは誰にも相談できなかったから、3年くらいずっと溜め込んでて1人で。誰にも相談できなくて本当に孤立していたので、それは分かりやすくつらかったですね。
人に話せる・話せないが、割と大事というか。
話したんですよ、いっぺん親に。でも信じてくれなくて。親も分かってなかっただけだと思うんですけど、信じてくれなくて「もうダメだ」っていう感情になったのはあります。
その生きづらさや悩みを持っているものを相談して、受け取ってくれたっていう経験や人はいましたか?
ちゃんと病院を受診して診断名がついた時には、ちゃんと親も分かってくれたので親とか。あとは友達とかは受け止めるくらいしかできないじゃないですか。だから「あ、そうなんだ」って受容してくれて、普通に接してくれました。
何か特定の「診断名」や「ラベル(AC、HSPなど)」がついたことで、気持ちが楽になった(あるいは苦しくなった)経験はありますか?
発達障害なんですけど、私はASDって診断されていて。特性として聴覚過敏というか音に敏感だったり、他人と関わるのが苦手なんですね。その苦手っていうのが白黒思考っていうか、物事を0か100かで考えちゃう極端な思考をしていて。
そのせいもあって人のことを嫌うことが多くて、自分のルールに従わない人間を全員嫌いにしちゃうので、嫌うことが多くて。でもそれは自分の性格が悪いんだってずっと思ってたので、ASDの特性なんだよって言われた時に、「脳の仕組みなんだ」と思えてちょっと楽になりました。
その発達障害が分かって、特性にうまく向き合う・付き合うための工夫みたいなものはありますか?
まだあまりやってないんですけど、例えば「この人嫌い」って思った瞬間に、私LINEをブロックしちゃうんですよ。連絡手段を断っちゃうので、それをしないように気を付けていて。消す前に「もう一回考えよう」「本当に切っていいの?」って自問自答して、それを明日に伸ばす、また明日に伸ばすっていうのを続けて切らないでおく、っていうのをやってます。
それは自分で決めてやってるんですか? 伸ばすのは逆に苦しくないですか?
母が割と理解がある方なので、相談しながら「待ってみたら」と言われてやってます。苦しいですけど、切られる方も悲しいじゃないですか。他人のことも「傷つけてるのかな」と考えたら、直そうと思えるというか。
「誰かの力になりたい」と思う原動力と過去の後悔
あなたにとって「誰かの力になりたい」「居場所を作りたい」と思う原動力はどこから来ていますか?
めちゃくちゃヘビーな話なんですけど……人生で後悔してることが2つあって。1つは、昔ハムスターを飼ってたんですよ。そのハムスターが死んじゃった原因って、たぶん私のお世話不足なんですよ。私は小学生くらいだったんですけど、知らず知らずのうちに知らなくてお世話を雑にしてしまって死んじゃったと思ってて。自分がちゃんとお世話してたらもっと生きてたかもしれないっていう後悔がすごくあって。
あと、もう1つが、前の犬を死なせてしまったっていうのがあって。あれも今から考えたら、ASDの特性で人を嫌いやすくて「ちょっと受け付けないな」って思っちゃって放置して死なせてしまったっていうのがあって。
私、罪悪感を感じる必要はないのかもしれないですけど、すごく後悔してて。だから、その2つがあって……ハムスターに関しては人じゃないですけど、死なせてしまったっていうのがあって、「生き連ねていいのかな」くらい思ってた時期があって、中学校の時に。でも、私自身が死んだとしても何も変わらないじゃないですか。だったら、絶対そういうことやらないようにして、社会に還元しようと思って。罪滅ぼしみたいにして、ちゃんと生きて人の役に立とうって思いました。
そのハムスター、すごく人生に影響を与えてますね。子どもの頃のその体験がずっと残っているんだね。悲しかった?
本当に(笑)。「かわいそうなことしたな」ってずっと思ってますね。
もちろん。プールに行っていて、帰ってきたら死んでて。死に目にも会えなかったし、「自分は遊んでるのにこの子は1人で死んだんだな」と思ったらプールも行けなくなっちゃって。トラウマというか。だから人助けだけじゃなくて動物保護の方にも力になれたらいいなって思ってます。
保護猫の活動にも繋がってるんですね。
家にも保護猫がいますし、寄付とかも最近始めたんですけど、そこに繋がってます。
「名前のない痛み」と、自分を大切にすること
「名前のない痛み」や「言葉にならない生きづらさ」に対して、あなた自身はどんな思いや感覚を持っていますか?
すごい大事なことだと思っていて。さっきの父親との関係もそうなんですけど、私と父親って全然毒親とかではなくて、むしろすごく良い親なんですけど、どうしても意思疎通が苦しい。そういう「名前がつかない悲しみ」をちゃんとすくい取ることがすごく大事だと思っていて。「なんか苦しい」「なんかモヤモヤする」で終わらせないで、それを言語化して「自分はこうしたいんだ」っていう道筋を立てていくことが大事なのかなって思います。
お父さんとはどういう時に苦しいですか?
父がずっと機嫌を窺ってくるのがすごく嫌で。父が疲れてたら「静かにしておこう」とか、今日は機嫌いいなと思ったら話しかけたり、八つ当たりもしてくるし、すごい怖いんですよね。昔から父のことが怖くて苦手だったんですけど、一緒に住むようになって余計に怖くなって。だから、分かりやすい暴力を振るわれたわけじゃないんですけど、カバートモラハラ(隠れたモラハラ)みたいな感じです。だから、ちょっと威圧的な男性は苦手なんですよね、父のせいで(笑)。
あー、でもそれ私も似てるかも。私の父も別に普通に旅行に連れてってくれたり(良い父親だったけど)、言い方とか接し方とか。「もっといい言い方あるやろ」っていう(笑)。うちの父はめっちゃ苦労してて、わたしも(父が)苦労したのを知ってるから「まあそういう振る舞いになるのはしょうがないな」とは思うけど。
自分自身の「弱さ」や「未完成な部分」と向き合う中で、救いになっている考え方や、心の支えにしている言葉・存在はありますか?
最近は羊文学の『マヨイガ』という曲にある「傷ついたら泣きなさい」という言葉に、すごく救われています。
私、普段は結構涙を我慢しちゃうタイプなんです。それなのに、結局耐えきれずにすごく泣いてしまったりして……(笑)。でもその曲を聴いたときに、「あ、傷ついたら素直に泣いてもいいんだな」って再認識できたんですよね。涙を我慢して感情を溜め込むんじゃなくて、泣くことでちゃんと自分の感情を発散させて、傷つきながら、少しずつ心を回復させていけばいいんだなって思えるようになりました。
ちゃんと傷つくようになった? 今って、どっち?なんか自分をないがしろにしがちか、割と大事に自分をしているほうか。
傷ついたって言えるというか、「あ、私傷ついてるな」っていう状態を認識できるようにはなりました。
「自分を大事にする」っていう状態が、まだあんまり分かってなくて。なんか過去の後悔っていうのがあって。なんか本当に自分って生きてていいのかなって思ったことがあったんですよ。生きてる価値……価値でもないんですけど、なんか生きてていいのかなっていう、許されたいのか何なのか分からない……みたいな感情になってて。
それこそ試し行動じゃないんですけど、「今この人は私が死んだら、悲しんでくれるのかな」っていうのを最近よく考えるようになって。んー、何が言いたいのか分からなくなってきたんですけど……(笑)。とにかく自分を大事にするっていうのがよく分かってないんですよ、私。主体性が全くないんですよ、自分がない。なんか他人と比べることによって、他人と比べたり、自分……他人と察することによって自分の輪郭がはっきりするみたいな感覚で生きてて。
あ、分かる。あれだよね、なんか他の人に言われて「あ、自分こんな今感覚。あ、自分って今傷ついてるんだ」って。
そう、そうです。なんか常に相対的な評価、自分に対して、を課してる節があります。
関係性と居場所のあり方――TEARDROPSでの役割
TEARDROPSの仲間やメンバーは、あなたにとってどんな存在ですか?
まだあんまり関わってない人の方が多いので、正直まだ分からないっていうか、これから深まっていきたいなと思ってます。
じゃあ関わり始めた最初の方とか、理事誘った時とか、なんかどんなどんな思いがあったかというか、その時どう思った?
そもそも、ぶっちゃけ「なんで私なんだろう」って思いました(笑)。聴いてみたいんですよ。「なんで私を選んだんですか?」って。
なんで……えっとね、その時はゆきさんは「あまやどり」という団体を立ち上げて掲示板をやってて、今年もやってたけど、NHKでやってた『8月31日の夜に。』って番組があって、それで、まあ、NHKのサイトで生きづらいっていう学生の子達が言葉吐いて、それを芸能人の人が読んでっていう、そういう番組があって。
だから、なんかそれがずっと自分の中で活動の理想で「こういう場が作りたい」っていう風に、思ってて。で、ゆきさんのやってる活動というか、noteとか、色々書いてる言葉とかを読んで、なんだろうな、素直に惹かれたというか、そこで「一緒にやりたい」とか「一緒に作りたい」って「一緒にやってほしい」っていう風に思って。通ずるものというか、あったんやと思う。直感で。
まあね、似てますもんね、なんか(笑)。まあ大きく分ければ精神保健分野?っていう活動のジャンルもそうだし、なんか、人の内面を見てるような活動をしてるなっていうのを感じてるので。
医療や専門家だけでは届かない部分に対して、この場所でどんな「彩り」や「安心」を届けていきたいですか?
やっぱりその医療って、金もかかるし、まあいろんな公的支援があるとは言えお金かかるし、敷居高いし、専門職だからこそ分かんない部分もあると思うんですよ。
だからそういうのをカバーできるような存在?だからなんて言えばいいのかな、ハード面は医療に頑張ってもらって、ソフト面を、私たちがやっていきたい、っていう風に思ってます。
一緒(笑)。
ふふっ(笑)。
これからの生き方――「自分にかけた呪い」を解くために
団体の未来とは別に、あなた個人として「こんな風に生きていきたい」「こんなささやかな暮らしを送りたい」という個人的な願いや理想はありますか?
難しい(笑)。あ、でもなんか、ちゃんと「自分に生きてていいよ」っていう許しを与えたいです、いつかは。
「生きてていいよ」って、他の人から与えられるものなのかな?自分で……。めちゃくちゃ自分のことをすごいって存在肯定してくれてた瞬間って今までにありました?
自分で……うーん。なんだろうな。罪の意識があるんですよ。その、ハムスターちゃんとか。自己肯定感が本当に低くてっていうか、本当に自信を持って言えないんですよ。自分、幼少期に何かあったわけじゃないんですけど、なんか、すごい、うーん、かろうじて生きている状態がずっと続いてます。
私、褒められるの苦手なんですよ。何企んでるんやろうと思うんですよ。何にもないぞと、こっちには(笑)。なんか、それこそ優しくされてもすごい居心地悪くなっちゃって。なんで私なんかによくしてくれるんだろうって、「私なんか」がすごい付いてくるんですね。その…人間関係にも。
多分、これすごく失礼な話ではあるんですけど、いわゆる毒親家庭とか、いるじゃないですか。毒親とか貧困とか、お金もすごいハンディキャップ、生まれながらにして、こう自分では変えられないハンディキャップみたいなのが、ある人って絶対いるじゃないですか。
私はそれが全くない人間なんですよ。
すごい親に恵まれてるし、貧困でもないし、私は結構いい、いい家で。いま、発達障害とか強迫症はあるものの、別にそこまで重くもないし、五体満足だし、まめちゃめちゃ重い障害でもないし、めちゃめちゃなんか恵まれてるなって思っちゃうんですよ。
恵まれてるなって思った時に、本を読んでは、その、すごい酷い親を持って生まれる人もいるし、重い障害を持って生まれる人もいる、その人たちの不幸せとかを勝手に決めつけてはいけないっていうその、前提はもちろんあるんですけど、その差は何なんだろうっていうのをずっと考えてて。
なんか、なんだろう「環境に恵まれている」のの「くじに当たった人間」なんですよ、私。なんか、そんな幸せを、自分だけ享受していいのかなっていうのがずっとあって、だからその社会に還元したい気持ちがあるんですけど。でも、これすごく不都合な話ですよね?
エゴではあるよね。
エゴではあるんですよ。でも、なんかどうしてもそこが拭えなくて、なんか、ある日から、たぶんすごい自分に呪いをかけてて、私が。それを解くのが人生なのかなと思ってて。死ぬまでに自分にかけた呪いを解ければ、まあいい人生だったって言えるんじゃないでしょうか、って言える。
呪いね。まあ私もそうかもしんないな(笑)。
まあ、みんなかけてますよね(笑)。
今回のインタビューを終えて
「恵まれているくじに当たったからこそ、社会に還元したい」「自分にかけた呪いを解くのが人生」。ゆきさんが語る言葉には、繊細でありながらも強い誠実さと、自分自身と深く向き合い続けてきた重みがあります。
「生きづらさ」や「名前のない痛み」は、わかりやすい理由がある人だけに訪れるものではありません。恵まれた環境の中にいても抱いてしまう罪悪感や葛藤。そうした声にならない胸の内を否定せず、丁寧に汲み取っていくことの大切さを改めて感じました。
医療というハード面では届かない、日々のささやかな「彩り」や「安心」というソフト面を届けていく――。ゆきさんの歩みや言葉が、同じように「自分に呪いをかけてしまっている」誰かの心を、少しでも解きほぐすきっかけになれば幸いです。
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